偶然出くわした被害者

今日、たまたま喫茶店でお茶を飲んでいたら、突然話し掛けてくる女性が現れた。私はYoutubeで音楽を聴きながらネットをつらつら眺めていたのであるが、「お仕事帰りですか?」などと話し掛けてくる。私はあわててヘッドホンを取り外し、「ええ、まぁw」などと話に応じ、仕事の大まかな内容だとか、何処に住んでいるといった、そんな他愛も無い世間話を、その女性としたのであるが、普段は私から人に話し掛けることが多いため、逆にしかも女性から話し掛けられるなど滅多に無いことなので、多少は戸惑いながらも応えに応じて10分ほど話しただろうか、突然店員が現れ、その女性に対して「お客様、申し訳ありませんが本日はお引取り願えませんでしょうか」などと退店を指示したのである。

その女性は店員の言葉を聞くと同時に、そそくさと帰り支度をして店から出て行ってしまった。「大丈夫でしたか?」店員が私に聞く。大丈夫って何が大丈夫なのかと不審に思いながらも、その店員曰く、その女性は『誰かに追われている』と主張し、店に来ては他の男性客に話し掛けたり、精神的な病気で通院しているという噂もあり、従って店長も長らく迷惑していることなど、私に話してくれたのであるが、私は咄嗟に

それ、集ストでしょ!?

何のお導きか知らないが、私の住むほんの直ぐ近くに居住する、しかも、その被害者が私に話し掛けてきていたのだった。彼女の話しながらも時折小刻みに震える病的な唇の動きや、それに伴う妙な喋り口調、世話しなくタバコを吸う仕草等、あれは間違い無く精神に異常をきたしている症状だった。『追われている』その誰かとは勿論私も含まれていたに違いない。それを確認する為にも、直接その当事者である本人に確認を取るべきと考え、私に話し掛けたのだろう、私だけに留まらず、他の色々な人にも。

不審なこと、何か腑に落ちないことがあれば、直接本人に確認を取る。これは常套手段である。だが中々できないことでもある。何せ、何も分からないんだから。その挙句に不審に思われ、果ては店員に顔を憶えられて、退店の指示を出されるまでになってしまったのである。

違う、それは、違う。
口に出したくても言えない、分かって貰えない、だからと口に出したらキチガイ扱い。通院しているという噂、いや、噂じゃない、そもそもそんなことは、、、

ここで会ったが100年目?!
この時が、まさに、ここでの私の対処の仕方が問われる時である。
不審点はあったが、それは集スト特有のものであり、非常に聡明な女性であったことは確かである。人に話し掛けて確認を取るという、心得もわきまえている。だからこそ、集スト被害者なのである。

次の機会、次の機会さえあれば・・・
しかし、私に何ができる?
何が助言できる?