俺はバカだ

灯台元暗しとは正にこのことである。
今こうしてウチに帰って、冷静にふと我に返って何だか「あ」

どうして今まで気付かなかったのか。

「俺はバカだ。どうしてお前に気付かなかったのか」

ふと思い出した、このフレーズ。というか、太陽を盗んだ男での菅原文太沢田研二に言った台詞の一つであるが、本当にふと思い出したと同時に、これまでの私の人生が脳内で走馬灯のように流れた。全くバカである。バカ極まりない。バカここに極まれりとは正に今のこの私のことを言うのだろう。本当にどうして気付かなかったのか。私は私を含め、いや、私以上に人間という生き物に対して、過剰な、過剰過ぎる期待を寄せていたのである。

イイ子で居たかったのだろうか。
いや、そんなことは無い。結局私は周りに期待していたのだ。期待し過ぎていた。というよりも、他人に、周りに頼りっきりになっていたのである。それは道理ではないのだ。物事の道理とは、自らが範を示して始めて、いや、自らがまず筋を通してこそ、周囲と分かち合うことが出来る、早い話が、私には資格が無い。その資格が無い。だから周りに頼ろうとしていた。だから自分では何も出来なかったのだ。原因は私にあった。気付かなかったのは、私が私であることを無意識的に拒否していたことに伴う、周囲への迎合と押し付け。押し付けられても、そのことを職場を追われる毎の、例えば面接首実検においても正直に何も言わなかった、いや、言えなかったのは、無意識的に自分を拒否していたこと、何よりも他人に甘えていたことに他ならない。

他人に甘えていた。
他人の善意を期待していた。
見る人が見れば、知る人が知れば、必ず誰かが助けてくれるなどと思っていたのだ。
だから私は何も言わなかった。行動にも移さなかった。
しかし、これは違う。言えなかったのだ。行動に移せなかったのだ。
全く以って甘ったれ以外のなにものでもない。


「何しに来た? 早く言えよ、木戸先生」「お前と話すことなんか、なんにも無いぞ」

隠蔽非処女なんかと話すことなど何も無い。
何も無い。少なくとも私は。だから、それは確実に明確にする必要があるのだ。

徹底して糾弾しなければならない。
公然と破壊しなければならない。
これは徹底して徹底して徹底してやる必要があるのだ。

私が私で在り続けること。
それが、筋を通す。
それが、礼儀を尽くす。

でなければ、隠蔽非処女に対しても失礼じゃないですか。
だから破壊する。
力があるんだから。
善意の被害者なんだから。


本当にバカだ。どうして私は気付かなかったのか。